『布施』これは、他人を助ける、他人を思いやる。または親切な心や与える心をいい、それには大きく二つの方法があります。金銭や物質を施すことと、まごころを施すこと。施す時は、いつも慈しみの目で、なごやかな顔で、心のこもった言葉を語り、奉仕する時には捨て身になって行い,喜びや悲しみを分かち合う。自分がそこまで尽くしても、決して報酬や見返りを期待しない。反対にそのような施しを受けた人は、その恩に報いる努力をする。それが礼儀である。受けた恩を受けっぱなしで素知らぬ顔では、それこそ恩知らずになってしまう。ただし、恩返しにも細かい心くばりは必要です。それは分に応じたお礼をすること、決して背伸びをしてはいけない。私は常にこのことを心掛けて人と接してきました。たとえ男と女の関係であっても肉体関係を見返りに期待したことは一度もありません。そこには常に恋愛感情が一番にありました。男と女の関係も心と同一と考えたいのです。現代は自分の心をコントロールできない人間が増えたと指摘する人が多い。それが原因で人類を滅ぼしかねないという人もいる。これは決しておおげさな言い方ではないでしょう。
人の心について語ることは難しい。まして人の心の病についてはなおさらである。大事なことは、いつも自分の心のあり方について意識的に考えを巡らす習慣をつけることです。そうすれば、今、自分の心はどんな状況のどんな位置にあるのかがわかってくるはずです。恋愛はある意味で苦しみでもあります。苦しみをただ嘆くだけではいつまでも解決しない。原因を手繰り寄せてみるとそのまた奥にある原因がわかるものです。それらを一つずつ明らかにする努力が必要なのです。悩みや苦しみをそのまま悩んだり苦しんだりするよりも、そのど真ん中に自分をおいて安らぎを見つけ出す。貧苦や不遇を呪うことなく、その中で安らぐにはどうすればよいかを考えてみるのです。私の不倫はすべて女の弱さを助けるために始まったことなのです。私がいなければ幸せになれないと思うことが唯一の救いなのです。
夜中にこんなことを考え巡らしていたときです。ユジンから豊胸手術が終わって退院したというメールが届きました。私は、良かった、と返信すると、相談事があるので会えないかと言ってきました。ちょうど明日が土曜日で仕事もないので明日、箱根に行くことになりました。
ユジンはミニスカートに薄手のブラウスにカーディガンを羽織って私を出迎えてきました。
「ユジン、手術がうまくいってよかったね。もう自分がかたわだなんて思うんじゃないよ」
「ジュンサンからいただいた手術費用、思っていたより安くてすみましたのでお返ししますね」
「そんなの気にしないでいい。生活費にしておきな。それよりも、どんなに綺麗になったか見たい」
ユジンはカーデガンを脱ぎブラウスのボタンを一つ一つ外していきました。ブラウスを脱ぐとノーブラで二つの乳房があらわになりました。
「綺麗だよ、ユジン。本当によかったね。触れてもいい?」
私はユジンの乳房に優しく触れました。ふくよかな乳房でした。私はユジンの身体を抱きしめキスをし、乳房にも唇をつけました。
「ジュンサンのおかげで乳房が二つ揃いました。ありがとうございます。」
「ブラジャーはしないの?」
「まだ締め付けられると苦しい気がするんです」
そう言ってユジンは服を着ました。
「ユジン、相談事ってなあに?何か困ったことでもあるの?」
「わたし芸者をやめようと思っているんです。お酒相手のお客さんのお仕事が嫌になったんです。いやらしいお客さんもいるし。ジュンサンに申し訳なくて。こんな仕事しているのいやでしょ?」
「うん、芸者にさせておくわけにはいかないと思っていた」
「パン屋さんを始めようと思っているの。いつも買いに行ってるパン屋さんがもう隠居するので後をやらないかと言っているの。家賃、パンを焼くオーブンなど含めて月十万円でどうかって言っているの」
「場所はどのあたり?」
「湯本駅のすぐ近く、お客さんもそこそこに入っているし。あとはわたしの腕次第なの」
「十万円ならいい条件かもしれないな。そのお金は僕が出すからさっそく決めたらどう」
「初めはパンの作り方を教わったりしないとならないから苦しいかもしれないけれど・・・・」
「後でそのパン屋さんに行ってみよう」
「ジュンサン、ご飯まだでしょ?パスタと私が家のオーブンで焼いたパンだけれど」
ユジンはご飯の支度をしました。
「ジュンサン、今日、泊まっていってくれるでしょ?」
「来週また来るよ。それまでにパン屋さんと契約しておいてね」
「ジュンサン、この頃泊まって行ってくれないの寂しいわ」
食事を終え、私たちはパン屋さんに行きました。
少し小さいいけれど綺麗な店でした。
私は店主に後を引き継ぎたい旨を話しました。連帯保証人は私だと話しました。
さっそく、明日からパン作りを覚えてもらいことになりました。そして新規開店は三月の一日に決まりました。
「早い方がいい。よかったね。ユジン。」
「ジュンサン、今日決めちゃうんですもの、びっくり!」
帰りにお店のパンを貰って帰りました。
「来週の土曜日にまた来るね」
ユジンはどこか寂しそうでした。
続く