今日は仕事始めの日です。いずみが今日から使うパソコンの設置をしなければならないのと、神棚のしめ縄を暮れに買って大掃除の日に交換していていなかったので今朝はいつもより早く家を出ました。いずみを車に乗せて一緒に行こうと思いましたが、今日から毎日出勤するのにいつも一緒だと女性事務員の鈴木が女性の感で変に思われるといけないので、なるべく一人で通勤してもらおうと思いました。仕事始めということで道が混んで事務所に着いたのは八時半でした。私は早速、パソコンの設置作業に取りかかりました。
間もなくしていずみが事務所に入ってきました。
「先生、おはようございます。初詣、楽しかったです!」いずみはスーツ姿で初々しくいっそう綺麗でした。
「家具屋さん十時頃来るって言ってたよね。それまで座って待っててね。」
「コーヒーいれますね!」いずみは言いました。続いて事務員の二人が到着しました。
「明けましておめでとうございます!」二人が言いました。
「山下君、私の机にの上にあるしめ縄を取り替えてくれるかなぁ。」
「はい、先生、しめ縄ってなんのためにかざるのですか?」山下は言いました。
「神社の鳥居にはしめ縄が張られているだろう、このしめ縄には、いろいろな意味があるんだよ。最大の目的は、しめ縄を張ることによって、不浄なものの侵入を防ぐことだ。しめ縄の、しめ、には占有という意味があり、しめ縄は神の神聖な領域を示しているんだよ。しめ縄を張った神社の鳥居は、そこから先は神聖であり、不浄な者が入るところではないことを示しているんだよ。正月に家の玄関にしめ縄を飾るのも、家に不浄なものの侵入を許さないという意味があるんだよ。同時に、神を招き寄せる目的という意味もある。」と私は説明しました。
「皆さん、コーヒーが入りました!」私たちはいずみのいれてくれたコーヒーを飲みました。
家具屋さんが机と本棚と椅子を運んで来ました。私の部屋の私の机の横に並べました。パソコンもできたのでいずみの机にの上に設置しました。
「社長さんの机みたいで、わたしにはもったいないくらい!」いずみは目を輝かして喜んでいました。
「じきに、本や書類でいっぱいになるよ。」私はパソコンの電源をいれました。
「司法書士試験の通信講座で検索してごらん。」私はいずみに言いました。
「出てきました!いろいろあります!」
「資料を取り寄せて、良いのを選ぼうね。はやいうちに申し込んだほうがいいだろう。」
昼になり、私たちは近所のそば屋で鍋焼きうどんを食べてまた事務所に戻って来ました。今日は電話もなく静かでした。来客もありませんでした。
「みんな今年は何歳になる?」山下は四十二歳、鈴木は三十三歳、そしていずみは二十五歳と答えました。
「何だ、二人とも大厄じゃないか!厄払いに行ったの?」
「まだ行ってません。先生、そもそも厄って何ですか?」山下が尋ねてきました。
「厄年は、災難や災いが降りかかってきやすい年であり、万事気をつけなければならないとされてきたんだ。厄年は男女によって違い、男性は二十五、四十二、六十歳、女性は十九と三十三歳なんだよ。とりわけ、男性の四十二歳、女性の三十三歳は大厄とされている。これは、男性の四十二歳は、死に、通じ、女性の三十三歳は、散々、という語呂合わせに発するようだ。この大厄の前後を前厄、後厄といい、大厄では厄は前厄、本厄、後厄と三年続くとされる。たしかに、男性の四十二歳は心身の転機でであり、若いときと同じようにしていると、体に変調をきたしやすい。女性の三十三歳は、昔は子育ても終わりに近づいたころで、やはり心身に変調をきたしやすい年齢なんだ。そこで、男性の四十二歳、女性の三十三歳を大厄とするようになったのさ。だから、神社や仏閣でお祓いをしてもらう風習があるんだ。事務所には厄を持ってこないでくれよ!」と言いました。
なんだかんだと話をしているうちに時計の針は五時を過ぎました。外はもう暗闇に包まれていました。
「明日から本格的に仕事になるからね!」と私は言い仕事の指示を二人にだしました。いずみはパソコンに夢中になっていました。他の二人が帰った後もパソコンを操作していました。私は自分の仕事に取りかかりました。
時計が七時を指しました。私はいずみに「食事して行こうよ。それからこれ定期代ね。明日買っておいでね。」と定期代を渡しました。
「もう、夜の仕事がないから早くお休み!」と言っていずみの髪にキスをしました。
「先生、わたし本当に幸せです。」と言うと私の胸に飛びついてきました。私はいずみの体を抱きしめました。いずみは目を閉じキスを求めてきました。私はいずみの唇にキスをしました。
私たちは新橋で食事をして、いずみを家まで送りました。別れ際にもう一度キスをしていずみを見送りました。
続く